きたない心をキミにあげる。
分離(A)







「圭太ー。どうしたー?」


「え? いや、何も」



ギプスが取れたおかげで学校でのジャージ生活が終わった。


松葉杖は手離せないけど、制服で普通に登校している。



「何だよースマホばっか見て。俺らにもかまえよー」


「や、どのアニメ見よっかなって調べてただけだし」


「嘘だー。お前しょっちゅう誰かとラインしてんべ」



俺は、ふとした時にスマホを確認する癖がついていた。


何も届いていないのを確認し、ちょっと凹む。この繰り返し。



時々、いつもの友達にスマホをチラ見されそうになったり、怪しまれたりしていた。



今は、休み時間。


笑い声や話し声が教室に響いている。


クラスメイト達は教室のいたるところで自由に時を過ごしていた。



退院してすぐの頃は、クラスメイト全員から心配そうな顔を向けられた。


弘樹に憧れていた女子が、落ち込んだ表情をしていた。



しかし、日を追うごとに日常が戻ってきた。



ただ、弘樹が使っていたロッカーは空っぽで、席はもうない。


弘樹がいないことが当たり前になってきている。



本当にこれでいいのだろうか。



そして、愛美は今、どうしているのだろうか。



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