Sweet Hell

彼のいる生活

仕事の合間に休憩するため
私はラウンジに向かった。
ネスカフェアンバサダーのところに行きスイッチを押すと
出来上がるまでの間、私は携帯を取り出して中身を確認した。

最近、私は頻繁に携帯を見るようになった。
彼からの返信は基本的に早かった。
日本の若い男女がするような相手を焦らすためにわざと返信を遅らすようなことは
アメリカ人の彼は全くしないようだった。

「なぁんだ、楓もいたんだ!お疲れ!」
みほが話しかけてきたので一旦目線を彼女の方に移した。

「うん、休憩しようと思って」

「そうそう、ブレイクタイムは大切だからね!」

私は出来上がったエスプレッソを取り出すと
彼女と一緒にビル群が見渡せる窓側の席に腰を下ろした。
椅子に座ると私は窓の外を眺めることなく
携帯の画面を開いた。

「ねぇ、最近本郷さんが水筒持ってきてるの知ってる?
あれ、秋葉さんが彼にプレゼントしたらしいよ。
やぁね、見せつけちゃって。見てるこっちが恥ずかしいわ」

話しかけても私はすぐ返答が出来なかった。
彼からまだ返事が来てないショックで思考が一瞬停止してしまった。

「ねぇ、聞いてる?最近良く携帯見てるけど彼氏でも出来た?」

人をからかうような笑みを浮かべ前のめりになりながら私に聞くと
私は彼女の質問を打ち消すように携帯を見ながら
「ねぇ、今から13時間前って何時?」と聞いた。

「は!?」

突拍子のない質問に驚いたみほは、私に向かって怪訝そうに
「いきなり何!?」と聞き返した。

「いいから、応えて」

私は何事もないかのように平然とエスプレッソを飲みながら
携帯の画面を見つめていた。

「13時間前っていったら2時とかじゃない?」

「2時かぁ・・・」

さすがに寝てる時間ねと思うと
ホッとして私は携帯をポケットの中に閉まった。
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