みんなみたいに上手に生きられない君へ
夕方とはいっても、まだ暑さの残る9月。
図書室は、ほんの少し窓があいている。

カーテンがなびく窓の近くに座った和也くんの正面に立ち、立ったまま手紙を読みはじめた。



「......和也くんは、サッカー部のエースで、いつも明るくて友達も多くて、クラスの中心で、とにかくまぶしいくらいにいつも輝いていて......

私にとって、憧れの人でした。
 
きっと悩みなんて一つもないんだと、できないことなんて一つもないんだと思ってた。

だけど、本当は違ったんだね。
和也くんも、私と同じように悩んでたんだね。

私には和也くんの辛さは完全には理解できないと思うし、今の和也くんに何を言ったらいいのか分からない」


   
言いたいことがあるなら、直接口で言えばいいのかもしれない。

だけど、大事な場面になると、いつも言葉が出てこなくて、上手に話せなくて、いつも失敗してしまう。

だから、手紙を書いてきた。
台本を読んでるみたいでおかしいかもしれないけど......。

何一つ言葉は発しなかったけど、真剣な表情で聞いてくれている和也くんをちらりと見る。

それから、そのまま次の行へと読み進めていく。
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