みんなみたいに上手に生きられない君へ
「珠希もそう呼んでたし。
つっきーはダメだった?月子の方がいい?
友達になったのに、いつまでも斉藤さんじゃよそよそしいよね?」

「ええ!?友達?」


ニカっと笑いかけられて、心臓とまりそう。

だって、いま、月子って......。 

しかも、友達!?



「あれ、違った?俺はもうそのつもりだったんだけど~」

「あ、ううん。う、嬉しいよ」



ニコニコとまぶしいばかりの笑顔を向けてくる前田くん。

もう私は、今日で一生分の幸福を使い果たしたかもしれない。

現にいま、いつ死んでもおかしくないくらいに、心臓の鼓動が早いし。



「よし!じゃ、月子とつっきーとどっちがいい?」

「つ、月子でお願いします......」

「おっけー。月子な。
俺のことも前田くんじゃなくて、和也でいいからな」

「え、う、うん。わ、わかった。
か、かず......和也、くん」



もう、今度こそ、前田くんは私の心臓をとめにきてるに違いない。

男子に下の名前で呼ばれたのも初めてだし、しかもそれがあの前田......じゃなくて、和也くんなんて。


今日は朝から大変な1日だったけど、手の届かない憧れの人と、思いがけなく友達になってしまった。

やっぱり、今日は......大変な日だ。

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