魔法使い、拾います!
おでこへキスを残してグレンが帰ってから、昨日はリュイなりに頭をフル回転させて考えた。しかし泣きはらした重い瞼が、リュイの意に反して閉じていくではないか。

抵抗を止めて言われた通り寝てしまおうとベッドに潜り込んではみたものの、体と頭は別物だった。悶々とした感情が次から次へとリュイを襲い、ゆっくりと眠ることを許してくれなかったのだ。

「私なりに一晩考えたんだ……。グレンとのこと。」

足元の雑草を蹴りつけながらリュイはポツリと呟いた。そして勢いよく立ち上がりグレンに向かって頭を下げる。

「ごめんなさい。考えに考えたけど、やっぱりグレンとは結婚できない。」

「あー……。いいから座れ。」

お前の答えは分かっていたから、と、グレンはため息交じりに笑い、リュイをまた隣に座らせた。

そのグレンの沈んだ声は、罪悪感という鎖になってリュイに巻き付いた。何を言ってもグレンを傷付けてしまうのではと思うと安易に口を開けない。リュイはぎゅっと目をつむった。

「で?俺のどこがだめなんだ?」

聞いても仕方のないことをグレンは口にしてしまう。分かっていたこととは言え、少しリュイを困らせてみたくなったのも事実だ。

ずっと好きだったリュイ。そのリュイの心をいとも簡単に持って行ってしまったヴァルに嫉妬してしまう。ヴァルと自分を比較して、どこがだめなのかをきっちりリュイに問い質してみたい気持ちも、無くはない。

< 92 / 100 >

この作品をシェア

pagetop