聖なる夜の願い ~ホテル・ストーリー~
最高の夜にしよう

雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう
きっと君は来ない ……
だなんて、口ずさんでる場合じゃないか。
一人きりだなんて、縁起悪いか。

あと7分で東京に着く。
ホームには彼が待っててくれるはず。
私は荷物を網棚からおろし、早めに出口に向かった。久しぶりの東京の街。

少しでも早く顔が見たいのに、新幹線は、駅に近づくと減速し出した。
肩に下げたバッグの中で、携帯が鳴っている。
慌ててバッグの中を探す
「もしもし?」

――ごめん、俺。今、会社なんだ。

「今、会社って、どういうことよ。もうすぐ駅に着くよ」

――わかってる。トラブルなんだ。悪いもう切らなきゃ。後で連絡する。

すみません。すぐ行きますって、彼の声とともに、電話が切れる音。
無情にも、間もなく東京とアナウンスが流れる。呆然としてるうちに、新幹線はホームに着く。
私は、押し出されるようにホームに降りた。
待つ人のいないホームに。

「どうすんのよ。もう」
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