極上な彼の一途な独占欲
06. 図に乗らないでください
——中途半端な時期って、それはそれで楽しいもんね。


楽しもうとしているわけでは決してないのだ。

だけどショーの期間、仕事場である会場に行けば彼がいて、忙しそうに自分の役目を果たしていて、私が現れるのを待っているときもあったりして——もちろん仕事の用件で——ただそれだけで、毎日胸がふくらむ。

いくつになっても、こういう気持ちというのは変わらないものらしい。




「天羽、待ってたんだ、来てくれ」

「はい」


ほらもう、そんなことを考えていたそばから、これだもんなあ。

翌朝、冷えたブースに顔を出すなり伊吹さんに呼ばれた私は、内心ですっかりいい気分になりながら、ついでに髪をちょっと直してみたりして、メインステージ前の彼のもとへ駆けつけた。


「なに朝からニヤニヤしてるんだ、気持ち悪い」

「…なんでもないです」


そうだった。こういう人だった。

不審者を見るような目つきをもらって我に返った。

今朝の彼はネイビーのスーツにダークレッドのネクタイ。ベルトと靴は、安易に茶を持ってこず、黒でクールにまとめているのが彼らしい。


「ええと、なんでしょう」

「よくもらう質問があるので、ガイドスタッフのQ&Aを更新したんだ。誤解を招きやすい部分なので渡す前に全員に説明をしたい」

「では、朝礼前に全員ここに集めます。10分あれば足りますか?」

「そんなにいらない。5分でいい」

「かしこまりました」


ちょうどそこに中山さんがやってきて、タブレット端末で新しいQ&Aを見せてくれた。


「今、出力したものもこっちに向かってるから。開場前には渡せると思う」

「承知しました」


うなずいてから、私は女の子たちのいる控え室に向かった。


「おはよう、みんな揃ってる?」

「おはようございまーす」
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