幾久しく、君を想って。
ハーフ成人式
「おかえり」


朝になって拓海は実家から部屋に戻った。
ドアを開ける子供に声をかけているのに、本人はじっと外を睨んでいる。



「…拓海?」


寝不足でショボショボする目を瞬きさせた。
拓海は「うん…」と呟き、パタンとドアを閉めて入ってくる。



「朝ご飯は?」


「おばあちゃんが作ってくれた」


「そう、ならいいね」


そう返しながら母には申し訳ないな…と思う。
後で実家へ顔を出して、昨夜は遅くなってごめんね…と謝っておこう。



昨夜家に帰ってからずっと、スマホの電源は切っている。
松永さんからメッセージやメールがくると返しようがないと思い、わざと電源も入れずにおいた。


昼近くになって電源を入れてみると、意外にも林田さんからメッセージが届いている。


『宮ちゃん、その後あのイケメンとどう?』


まずい事を聞いてくると思い、すぐにそれを消去した。
知らん顔をしていると何度も入ってきそうだから、先手を打つつもりで電話した。



「もしもし〜、宮ちゃ〜ん!」


電話に出た人は、いいところに掛けてきたと喜んだ。


「お願いあるのよぉ。私に簡単に作れるチョコレート菓子を教えて〜」


猫なで声で頼むところを見ると、既に一回失敗しているのではないか。


「宮ちゃん今年、何を作るの?」


毎年恒例の友チョコは何かと問われた。


< 132 / 258 >

この作品をシェア

pagetop