愛しの残念眼鏡王子
昔から犬……というか、動物には特に興味はなかった。

母親が動物嫌いで、飼いたいと思っても飼ってもらえなかったし、せいぜい動物園で見て触れ合うだけ。


テレビなどで見て可愛いなとは思っていたけど、大人になってひとり暮らしを始めても、飼いたいとは思わなかった。

そんな私がなぜユウを飼い始めたのか。……それは――いまだに胸を痛めてしまう、苦い思い出。


* * *


大学を出て就職した先は、中堅企業だった。

経理課に配属された私は、不慣れな仕事でもどうにか慣れていき、一年が経つ頃には、それなりに仕事をこなせるようになっていった。


そんな時だった。
職場の先輩に誘われ断れなかった、営業部との合同飲み会で彼と出会ったのは。


あまり飲み会の席は好きではなくて、歓送迎会や忘年会や新年会など以外は、極力断っていた。

けれどあの日は経理部でも、怖いと噂で一目置かれていた先輩の誘いで、どうしても断れず渋々参加したんだ。

いざ始まると、飲み会というより合コンのような雰囲気で、私はますます居場所を失っていった。
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