千日紅の咲く庭で
anemone
照明で煌々と照らされた緑の芝生の敷き詰められたコートで響くボールの音と、そのボールに向かって走る選手たち。


9月を半分折り返した頃、昼間はまだ夏の暑さが続いているというのに、もう夜はすっかり秋めいていて、半袖のトップスで見学のベンチに座る私には、少しだけ寒いくらいだ。


岳と私の関係は相変わらずだけれど、私1人がこの間から岳を好きだと意識してしまって、時々岳との会話におかしな間が発生してしまったり、変なリアクションすることがあって困っている。


もう29歳。

それなりに恋愛だってしてきたというのに、なんだか岳を好きになるなんて思ってもいなかった私は、岳が相手だとなんだか調子が狂う。



そんな私の気持ちも知らないで岳は私がついドギマギしていると、いつものように「バカ花梨」だとか言ってくるものだから、お決まりのように口げんかして心の中で「好きにならなきゃよかった」と呟くのがオチだった。

まぁ、好きにならなきゃって思う時点で、岳のこと自分が気づいている範囲よりも、もっと好きになっているのだろうけど。


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