千日紅の咲く庭で
電気の点いていない我が家は、やっぱり寂しい。

こんな時、岳と一緒なら寂しさなんて全く感じないのに。


いつの間にか岳の指定席になってしまったソファーに腰を下ろす。
クッションを胸の前に抱き、頭をそれにもたげると、涙が一気に噴き出してきた。


何の涙かなんてわからなかった。

でも、一つだけ分かっているのは、この涙は岳のせいだってこと。


このところ、岳の言葉や態度に一喜一憂して、岳のことばかり考えてる。



あぁ、やっぱり私、岳が好きなんだ。

その思いに自分で気づいたら、心が一瞬軽くなった気がした。


そっか。
私、岳が好き。


涙が乾いた頃、ふと見たお母さんの遺影は、私を見て優しく微笑んでいるように見えた。


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