副社長と愛され同居はじめます
ゆったりとソファに身を預け、丸いワイングラスを揺らす。
綺麗な手、筋の張った甲、長い指。



「何を考えてるんですか」



私の副業を止めることもせず、咎めることもせず。
どういうわけか、例えこの店でがっつり稼げたって手が出ないようなドレスやアクセサリーを身に付けさせる。


その理由が、どれだけ考えてもさっぱり浮かんでこない。



「そうだな」



くるんとグラスの中のワインを回して、少し惚けた顔で香りを楽しむ。
そして、出た言葉と言えば脈絡がなく結局謎かけみたいなものだった。



「泳がせていた熱帯魚を捕獲したい」

「……は?」

「できれば傷つけたくないから、自分から網にかかってくれることを祈ってるんだ」



……大丈夫かしら。


お金持ちっていうのは、ちょっと変わった人が多いのかもしれない。


眉根を寄せて訝しむ私を見て、彼はくつくつと肩を揺らして笑い、結局何も教えてはくれなかった。


その日から、一か月後。


私は、クラブミュゼルのNO1になっていた。
当然、成瀬さん一人の手によって。

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