副社長と愛され同居はじめます
店に一歩足を踏み入れた途端、ざわ、と空気が揺れたのを感じた。


いつも馬鹿にするかライバル対象外の目線しか飛んでこないのに、今日は違う。
決して、いい意味だけでなく、みんなの私を見る目が違った。


隣に成瀬さんがいるだけで、羨望や嫉妬を含んだ目で見られ、声を潜めて何かを囁きあっているのがわかる。



……ああ。
なんだかややこしいことになりそうだ、と。


嫌な予感しかしなかった。



「ヒナタちゃん」



と、昨日のウェイターが近づいてきて私に耳打ちする。


話を聞いて、わー……必死だなー、現金な話だなー、なんかやらしー。
と思ったけれど、それを成瀬さんにどう伝えるべきか、少々悩んだ。


本来なら、上手にオススメするか可愛らしくおねだりするかなんだろうけれども。
正直、成瀬さんの謎の行動に振り回されて、疲れもピークで脳に余力がなかった。



「成瀬さん、ロマネ入れたそうですけどどうしましょう」

「それでいい」



躊躇いないよー、本気だ。
と、いうのはもう十分に身に染みている。


今、この胸元にぶら下がっているネックレスが、私が見たことも無いような金額のもので、それをコンビニで「煙草ちょうだい」って言うくらいの軽いノリで、お買い上げしてしまうのを見てしまったからだ。





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