完璧執事の甘い罠

突然の別れ



ーー私、ひなはこれより自らの意思の元、ダリウス王国へ向かいます!



そう言って、ひな様がアルバーナを去った。
必死に止める我々の声をも聞かず、ひな様は振り向きもせず。

どうして止められなかったのか。
手元に残ったネックレスを握り締めた。



「自分を責めても仕方がないだろ」

「じゃあ、どうしろというのです!」



そんな私を見て、ノエルが少しの苛立ちを見せながら言う。
私は声を荒げ反論した。

今思えば、防げたことかもしれない。
突然自分も国境に行くと言い出した時、不審に思っていれば。
なんとしても阻止していれば。


“命令”だと言われてしまえば、執事である私にはどうしようもなかった。
・・・はたして、ほんとうにそうであったか?



執事として。
そうであろうとしてきた。
いつでも、完璧であろうと。



あの時、ひな様の命令に従うことが、本当に執事として完璧な行動だったのだろうか。




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