完璧執事の甘い罠

記憶の扉



――記憶を一時的に喪失している状態でしょう。なにかのきっかけで思い出す事もあるでしょうが、最悪の場合死ぬまで思い出さないということもあり得ます・・・




私の話を聞き、診てくれたお医者さんがそう言った。
私は、記憶を失くしているらしい。


目を覚ましたら見知らぬ場所だった。
見知らぬ不思議な格好をした男の人二人。

でも、その人たちは私の事を知っている様で不思議だった。



記憶を失くしている。
そう言われたって、私自身自分の事は覚えてる。
私は日下部ひな。

高校を卒業してアルバイトをしている。
両親を亡くしていて、たった一人ぼっち。




だから、必要最低限の人との関わりしかとってこなかった私がこんな風に、心配してくれる人が側にいるということが信じられない。




私がなにも覚えていないという事を知った時の、二人の表情が消えない。
落胆したような、ひどくショックを受けたような・・・。



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