最後の恋
「杏奈…まだ気のせいだと思ってんのか?言っても怖がらずと思って黙ってたけど、さっきのアレは……気のせいじゃない。さっき、タクシーの中から電柱の陰に隠れた怪しい男が見えたから‥」

「………‼︎」


やっぱりいたんだ‥


勘違いかもしれないと思いたかったけど、今この瞬間に甘いその気持ちは粉々に砕け散っていく。


「ごめんな。でも、ちゃんと現実を見た方がいい。杏奈に何かあったら俺だって…」

「謝らないで。私のことを思って言ってくれたのも全部分かってるから。」

「だったら、ちゃんと彼には相談しろ。分かったか?」


真剣な表情で私を説得するタケに私は、


「…うん、分かった。」

「絶対だぞ。」


タケは何度も念を押しながら私たちはそれぞれの部屋に向かうため、カフェを後にしてフロント前を横切りエレベーターの方へと足を進めた。
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