日常に、ほんの少しの恋を添えて
「もういいです……生意気なこと言ってすみませんでした」
「いいけど。でも俺が甘いもの嫌いだからって、なにか問題でもあるのか?」

 困惑気味に専務が私に尋ねてくる。
 問題など何もない……ただ私がちょっと悲しいくらいで。

「……ありません」
「じゃあ、いいけど」

 この後特に話すことも見つからず私は黙り込んだ。同じく、専務も何も言わなかった。

 しばらくしてナビの誘導により、私のアパートの前に車が横付けされた。

「ナビだとここだけど。合ってる?」
「はい、合ってます。……今日はいろいろとすみませんでした、では失礼いたします」

 気持ち早めの口調で挨拶をし、私は車を降りた。
 私がドアを閉める間際に「お疲れ」と言ってくれた専務は、すぐに車を発進させる。すると黒い高級車は、早々に暗闇に消えていった。

 その様子を立ったまま見送り、くるりと踵を返しアパートに向かう私の足取りは、とても重い。

 あ――……私、上司相手にスイーツのことで何ムキになってんだろう。だけど大好きなスイーツのことああ言われると、反論せずにはいられなかった。

 そして出た結論。

 私、専務とは相性が悪いと思う。間違いない。

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