日常に、ほんの少しの恋を添えて
 そう言うと専務は小動さんと美鈴さんの方を見てニッコリ微笑んだ。

「じゃ、二人ともごゆっくり」
「ああ、またな、湊」
「……またね」

 専務を見つめ、ちょっと意味ありげに微笑んだ美鈴さんの心理はよくわからないが、手をヒラヒラさせる二人から離れ、姿が見えなくなったところでようやく私と専務はハアーっと一息つけた。
 そして専務が私を見て苦笑する。

「ありがとな、長谷川。助かったよ」
「いや、いいですけど。っていうか、あの女性と何かあったってバレバレでしたよ。もしかして元カノとかですか?」
「……当たり」

 何となく言っただけだったのに、当たってしまった。
 あっさり私に指摘されて、専務はちょっと憮然とする。

「わかりやすすぎますよ。そんなに鋭くない私にだってわかるくらい、二人の間にそれっぽい空気流れてましたもん」
「マジか……ちょっと座ってしゃべるか……飯行こう、飯」

 私は専務に連れられ、食事処が集まるフロアに移動させられた。
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