エリート御曹司とお見合い恋愛!?
3.制服か私服かは明確に
 待ち合わせ、というのはおこがましい。私が勝手に倉木さんの過ごしているところにお邪魔しているだけ。それでも朝のカフェでふたりで過ごすのは四回目になった。

 注文も大分慣れて、今日は思いきってコーヒーにアーモンドミルクを選んでみたり。

 倉木さんはいつも同じ席に座って、私よりも先に来ている。相変わらず私はなにを話していいのか分からず、倉木さんの振ってくれる話題に答えるのが精一杯だ。けれど、最初よりも気を張らなくなってきた。

 沈黙に戸惑うことなく、お互いに本を読むだけのときもあって、だからといってひとりで過ごしているのとは全然違う。

 こっそりと自分の前に座る倉木さんをたまに盗み見してみたり。皺ひとつない上質なスーツを身にまとい、その視線の先は文字を追いかけている。

 カップを持つ手、ページをめくる仕草、真剣な表情に鼓動が速くなってしまう。こればっかりは、きっと慣れることないんだろうな、と思った。

 男の人とこんなふうにふたりで過ごすことが、私の人生に訪れるなんて。お見合いをするのは、どんな人なんだろう。できれば、こんな気持ちで過ごすことができたら有り難いんだけど。

 そして朝にご一緒する以外、今のところ特段変わったことはない。そもそもこのビル、社内限定の交際なのだから、これ以上、なにかあるとも思えないし、今のままでも私にとってはすごい進歩だ。
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