キミのトナリ


その後の彼の動向を、私はまったく知らない。

おそらくは矢野さんと彼は連絡を取り合っていたんだろうけれど。
私はあえて彼のことは触れなかったし、矢野さんも話題にしたことはなかった。


文庫本はちょうど半分を過ぎたところ。

今夜中に読んでしまおうかどうか迷った。
時刻はもう零時を過ぎているし、明日のことを考えて一度は本を閉じ、目をつぶった。

だけれども、続きが気になった。
瞼の裏には彼とのことがありありとよみがえってくる。

もちろん、彼の病気がわかってからのつらかったことが圧倒的に主だった。
けれど、決してそれだけじゃない。

彼と付き合うまで、付き合ってから、そして別れるまでの幸せだったことだってちゃんと思い出せる。

彼が今どうしているのか。
彼は無事に完治の方向へ向かっているのか、独りで闘っているのか。
隣には、ちゃんと彼を支えてくれている人がいるのか。

私は見届けたかった。
だから、いったんは閉じた『君の隣』を再びめくった。

それでいて、やっぱり知りたいような知りたくないような、気持ちの振れ幅に戸惑った。
ひどく緊張していて、本を持つ手が震えていた。


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