偽りの先生、幾千の涙
3つ目の嘘 垣間見えた本音

side by 果穂



休日というものは退屈だ。


学校というイベントがないから、一日中家にいる事になる。


いつもよりも遅く起きて、家事をして、出された課題を淡々と進めても、24時間も経たない。


散歩がてら買い物にも行くけれど、欲しいものなんてないから、その日の夕食に必要なものだけを買って帰る。


余った時間はピアノを弾いたり、バイオリンを弾いたりしているけれど、夜遅くにやると近所迷惑になるからあまり出来ない。


そんな暇な休日が何日も続くゴールデンウィークというのは、私にとってはちょっとした地獄だ。


と言っても夏休みや冬休みに比べれば短いし、ゴールデンウィークには毎年予定があるからマシだ。


その日…5月4日の朝、私は学校に行く時と同じ時間に起きた。


掃除機をかけて、洗濯機を回して、洗濯物を干す。


今日は一日中晴れるらしいから、洗濯物を干したままでも問題ないだろう。


その後は苺ジャムを塗ったトーストと紅茶を朝ご飯にして、出かける準備をする。


髪をストレートアイロンで整えて、ほんの少しだけお化粧をする。


それからクローゼットを開けて、この日に着るための真っ黒のワンピースを取り出した。


シンプルで膝まで丈のある、シルエットの綺麗な黒いワンピースだ。


それを着ると、紺色の小さな鞄にお財布とスマホ、それから数珠を入れる。


そろそろ出かけようか、そう思っていたら、スマホが突然光った。


父からの電話だった。


出たくないけれど、溜息を飲み込んで電話に出る。


「おはようございます、お父様。」


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