泥酔ドクター拾いました。
隣で小さく息を吐いた藤代さんは、もう一度空を見上げた。

「俺はナースだからって、人の死に慣れないといけないとは思わない。何があっても淡々と仕事をこなすことは確かに大事だ。それは仕事上、常に求められると思う。だけど、こうやって仕事の時間から、少しだけ我に帰るとき位、落ち込んだり、泣いたりしてもいいと思うんだよ。一人で抱えきれないなら、俺が話聞くよ」

さっきから何を言っているんだ俺は。

「まっ、隣人、そうそう!!同じマンションの住人として聞くからな」


完全に動揺しながら、強がってみた。

「……ありがとうございます。大和田先生」


彼女の小さなお礼の言葉が俺の耳を掠めて、熱くする。
さっきから、胸の鼓動が速まったまま収まりそうにもない。

「あぁ、じゃ、じゃあ。また何かあったら、話位ならいつでも聞くから!!お疲れ」

俺は動揺を隠すようにして、ベンチから立ち上がると、逃げるようにして彼女のいる屋上を後にした。
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