泥酔ドクター拾いました。
藤代さんと視線がかち合ってしまって、俺は一気に冷静さを取り戻した。
掴んだ彼女の両肩からすぐに手を離して、彼女から少し距離をとって座る。

俺が真っすぐに座り直したのを確認したように彼女も、俺と横並びに真っすぐに座り直した。

言ってしまった言葉を思い返すと、恥ずかしすぎて言わなきゃよかったと後悔が胸の中をジワリジワリと侵食してくる。


「ご、ごめん……。少なくとも俺は、誰かを想って泣ける藤代さんは優しいと思うよ」

チラリと彼女の顔を盗み見ると、月明かりのだけでもはっきりと分かるほどに顔を真っ赤に染めている。

恥ずかしさと後悔が胸の中を侵食している俺は、押し黙る彼女を横目にさらに言葉を紡ぐ。

「ナースになって何年だとか、いくつになっただとか、関係ないと思うんだ。自分のことじゃなくて、他人のこと。しかも藤代さんにとって、あの患者は確かに受持ちだったかもしれないけれど、それ以上の関係ではないだろ?赤の他人を泣くほど思えるってすごいことだと思うんだ」
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