エリート御曹司が過保護すぎるんです。

【3】満員電車で密着

 業務の終了時間になった。

 出社時間が早い私は、仕事が終わる時間も早い。
 でも、ほかの社員はまだまだ業務が続く。

 営業で外回りをしている二階堂さんの勤務時間は、内勤の社員よりも不規則だ。
 業務の終了時に本社に送るFAXの送信履歴を見ると、真夜中の0時を過ぎることもあるらしい。

(もう少しだけ、待ってみようかな……)

 自転車の鍵なんて大事なもの、机の上になんかに置いて失くしてしまったら大変だ。
 それに、適当な誰かに頼んで、変に勘ぐられても困る。

 あと30分。
 それだけ待っても来なかったら、事情を話して誰かにこの鍵を預けよう。


 けれど結局、そのまま時間は過ぎ、内勤の社員も帰り支度を始めた。

 彼らの就業時間が終わると室内のエアコンが切れ、オフィスがサウナ状態になる。
 だからほとんどの社員は、みな定時までに仕事を片付けて、早々に帰途につくようにしている。

(さすがに私も、これ以上残っているのはきついな)

 さっきまで、期限が先の分の仕事を片付けながら二階堂さんを待っていたけれど、それももう限界だ。
 涼しい地域で生まれ育った自分には、東京の異様なまでの暑さはやはりこたえる。
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