冷血部長のとろ甘な愛情
下げた頭を半分ほど元に戻した私に専務がさらに近付く。そして、私だけに聞こえるくらいの小声で話してきた。


「晴生とも順調みたいだね」

「なっ……」

「ははっ。じゃ、よろしく」


何をよろしくされたのか不明だけど、専務は私たちが付き合っているのを知っている。

社内恋愛は禁止ではないが、知られてあれこれ言われるのは面倒だからと内緒にしてあるが、専務にだけは晴生が早々と報告していた。

浮かれて話してきたと言っていたが、浮かれる晴生は想像出来ない。

愛されているとは感じるけど。


「神原さん、チェックお願いしていいですか?」

「うん、預かるね」

「それと、これ良かったら宮田さんと食べてください」

「わあ、ありがとう! ここのクッキー、美味しいって有名だよね? 行ってきたの?」


坂本くんから書類と一緒に渡されたクッキーは最近SNSで話題になっているクッキー専門店のものだった。行列が出来るほどの人気店で一度は食べてみたいと思っていた。

だけど、長蛇の列に並ぶ覚悟がなく、諦めていた。
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