先輩、一億円で私と付き合って下さい!
第二章 付き合えば当然アレをしてもいい・・・?

 放課後、俺はノゾミに会いに一年生の校舎へと足を向けていた。
 渡り廊下を挟んだ向かい側にあるもう一つの校舎。

 そこが一年生の教室があるとはわかっていたが、ノゾミが何組であるかがわからなかった。

 行けばわかるだろうと軽い気持ちでいたが、アウェー的な場所で、見知らぬ生徒にじろじろ見られるのは居心地悪い。

 無理をして背筋を伸ばし、先輩面を強調する。

 適当に目が合った女の子に話しかけ、叶谷希望を知ってるかと訊いてみたが、横に首を振られた。

 彼女の印象が薄いためか、知ってる者を見つけるのに苦労した。

 やっとクラスがわかって向かえば、ノゾミはおらずがっかりしてしまった。

 その教室の出入口から中を見渡し、彼女がどんな風にここで勉学に励んでいるのか少し想像してみる。

 ここでポツンと座り、黒板を静かに見てノートに書き写している姿。
 授業中、当てられたら顔を真っ赤にして死にもの狂いで答えてるのかもしれない。

 俺の傍を横切ろうとしていた男子生徒を引き留め、それとなくノゾミの事を訊いてみた。

「あのさ、叶谷希望ってどんな子?」

 突然声を掛けられて戸惑い、そいつは「俺?」と、念を押すように、人差し指を自分の顔に向けて目を見開いていた。

 新しい制服がまだ体にフィットしておらず、だぶつき感があり、あどけない表情がとても幼げに見えるその男子は、少し慌てながらも俺を見て、訥々に答えた。
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