先生、僕を誘拐してください。


席について、お皿の端に乗せた塩にごぼ天を押し付けて齧ってみるも、味がしない。
もう一度たっぷり塩をかけて食べてみても味を感じず、冷静を装って普段通りにしていたのにバカみたいだった。

動揺しているのに、それすら気づかないなんて。

噛むと天ぷらのサクサクと衣のいい音がするのに、味が全く感じない。

朝倉くんは、悪意で近づいたんじゃなくても私たちが被害者だと知ったうえで近づいているわけで。

面倒くさい。それぞれの思惑がわからなくて迷路みたいだ。

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