ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
危険すぎる誘惑

そう言って駅まで送ってくれた峯岸だったが、別れ際もあっさりとしていた。


熱烈なキスがいつまでも、唇と脳裏に残っている。


別れたばかりなのに峯岸に会いたい…


会って抱きしめてキスしてほしい…


部屋に帰っても、考えるのは峯岸の事ばかりだった。


美姫の彼氏は浜田だと自分に言い聞かせても、消えない男とのキスの余韻は、残酷にも美姫を苦しめる。


美姫の職場に浜田が何も知らずに顔を出し、いつものように微笑んでくる度、罪悪感で胸が張り裂けそうになる。


彼氏が目の前にいるのに峯岸の顔がちらつき、今までのように浜田に心からの笑みが出ず、平静を装ってもどこかぎこちなかった。


「ごめん…まだ、今の仕事に時間を取られて美姫とゆっくり会える時間が取れないよ。少しの時間でも会いたいけどね…、美姫にそんな無理をさせたくないし、よかったら今度の週末、うちに泊まらないか?」


美姫の気持ちに気がつかず浜田は申し訳なさそうに謝り、会える方法をそれとなく示してきた。


いつもの美姫なら、会えない恋人と一緒にいる時間がそこしかないなら、うんと頷いて楽しみにその日を待ちわびていただろう。


だが、頷けなかった。

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