Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
第五章 愛しているというのなら
夜が明けて、いつも通りの朝が訪れた。
軽い朝食を食べて、着替えて、メイクして、家を出る。
ぎゅうぎゅうの電車に揺られて会社へいく。
――日常生活の始まりだ。

そのはずなのに、私の心は昨夜の口づけに囚われたままで、うまく切り替えられずにいた。
なにをしていても頭の中に彼のことが湧き上がり、たまらなく愛おしくなる。

こういうのを世間一般では『恋わずらい』とか呼んじゃうんだろう。
彼にわずらわされるという意味では以前と変わらないけれど、その原因が『恋』だなんて説明づける日がくるとは思わなかった。

そんな中、四月も最終日を迎え、世間は早くもゴールデンウィークのお祭りムード。
連休の中日である今日、一足先にバカンスへと突入した人々のおかげでいつもは満員であるはずの通勤電車も程よい空き具合を見せていた。

けれど年中無休のここ商品開発部には有給などあまり縁のない話で、それどころか――

「どうせ俺らは仕事だし?」

「早く終われば、カレンダー通りくらいには休めるかも?」

「むりむり、どう考えても終わらない」

淡い期待と恨み節が炸裂していた。
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