Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「お前ら、くっちゃべってる暇があったらさっさと終わらせろー。二連休は確保するぞー」

田所部長が号令をかけて、だらけた空気を引き締める。

「二連休は連休って言わないっすよー」

「土日と一緒じゃないですかー」

ぶつぶつと愚痴を垂れながらも、結局はみんな言う事を聞く。
いつだって田所部長は仕事の終わらない誰かを見捨てて休みを取ったりしないからだ。
だからこそ一蓮托生、頑張ろうと誰もが奮起する。

とはいえ、部長当人は相当過酷なスケジュールをこなしていて、見ているこっちが心配になってしまう。
一総務部員の時代から田所部長やここ商品開発部のお手伝いをしているのも、そんな彼らが放っておけなかったからで――。

そういう意味では、部長と御堂さんはちょっと似ている。
今では御堂さんのお手伝いまで始めたことを考えると、もしかしたら私は根っからのお節介人間なのかもしれない。

「佐藤さんはカレンダー通りでいいからね。むしろ、連休の中日に有給あげられないのは、申し訳ないけど」

「いえ、ありがとうございます。みなさん休日出勤なのに、私だけお休みいただいて申し訳ないくらいです」

「そりゃ当たり前だよ、やってる仕事が違うんだから。まったく、いつも佐藤さんは謙虚だねぇ」

とはいえ、ゴールデンウィーク向けに仕事の量が減るわけではない。
休みに入る前に片付けておかなければならないから、忙しさはいつもの五割増しだ。

その上、常に頭の片隅にいる彼の存在が、片隅どころかどんどん全面に侵食してきて、私の能率を落としていく。
こういう気持ちって、いったいどうやって整理をつければいいのだろう。
人を好きになるなんて久しぶりで、よく覚えていない。
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