副社長のイジワルな溺愛
誰にでも秘密はある

 ――あの人、実は相当男好きらしいよ。

 今朝、出社するなり耳にした、私の新しい噂だ。

 噂を流したのは構造設計グループの女性だって分かってるけど、別に反論しようとは思わない。火に油を注ぐだけだし、きっとそのうち立ち消えるだろうなって思えるから。
 別の部署の人と専務秘書が付き合ってるらしいって話も聞いたし、みんな面白おかしく人のことを揶揄して楽しんでるだけだろう。



「深里さん、倉沢さんとデートしたの?」
「お誘いいただいたので、食事に行っただけです。でも構造設計グループの人たちもいたから、デートじゃないですよ」
「本当に?」
「本当です」

 香川さんがムッとしながら事実確認をしてきて、ここにも敵がいたと思い出す。
 彼女の場合、もし私が倉沢さんと上手くいっても、悪口を言ったりすることはなさそうだけど。


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