副社長のイジワルな溺愛

「……いるよ」
「どんな人ですか?」
「あまり派手じゃなくて、でもかわいい人。背が小さくて、守ってあげたくなるような」

 ――好きな人くらいいるよね。
 告白でもして振られたらいいって思ったけど、やっぱりそう簡単にこの気持ちは消えてくれそうにない。


「ちょうど深里さんくらいの背丈だよ」
「え!?」
「帰ろうか。俺ももう戻りたくないし」

 私の問いかけには答えることなく、自然と手を引かれて横断歩道を渡る。


 私くらいの背丈で、派手じゃなくて……。
 この前、かわいいって言ってくれたし、困ってたり寂しそうにしてたら何とかしてあげようって思うって……そういってくれたばかりだ。


 期待なんてしたくない。
 だって、きっと勘違いだから。自惚れたら痛い目に遭うと思う。

 でも、私のことだって言われてるような気がして……沈んで冷たくなった気持ちが、彼の言葉や態度で温められているような気がした。


< 122 / 386 >

この作品をシェア

pagetop