副社長のイジワルな溺愛
「……いるよ」
「どんな人ですか?」
「あまり派手じゃなくて、でもかわいい人。背が小さくて、守ってあげたくなるような」
――好きな人くらいいるよね。
告白でもして振られたらいいって思ったけど、やっぱりそう簡単にこの気持ちは消えてくれそうにない。
「ちょうど深里さんくらいの背丈だよ」
「え!?」
「帰ろうか。俺ももう戻りたくないし」
私の問いかけには答えることなく、自然と手を引かれて横断歩道を渡る。
私くらいの背丈で、派手じゃなくて……。
この前、かわいいって言ってくれたし、困ってたり寂しそうにしてたら何とかしてあげようって思うって……そういってくれたばかりだ。
期待なんてしたくない。
だって、きっと勘違いだから。自惚れたら痛い目に遭うと思う。
でも、私のことだって言われてるような気がして……沈んで冷たくなった気持ちが、彼の言葉や態度で温められているような気がした。