熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月は大きく目を見開いて、一瞬息をのんだ。
そして、何故だか、がっくりとこうべを垂れる。


「……お前、ほんと……」


そんな優月に、私は焦った。
気持ちに反した言葉じゃないのに、伝え方が間違ってしまったんだろうか。


「わ、私。変なこと言った……!?」


それならすぐに訂正しなければ。
そんな不安が胸に広がる私に、優月は目を伏せ小さな苦笑を零した。


「半端ないプレッシャー……」


ボヤくように一言呟くと、優月は右腕を引っ込め、前髪を生え際から搔き上げた。
彼の右手が、その目元に影を落とす。
その向こうから、優月は真っすぐに私を見つめてきた。


「でも、照れ臭いからって、もう遠慮してる場合じゃない」


そう呟く口角が、強気に上がるのを見た。
優月は左腕もドアから離し、私の前でしっかりと身体を起こして姿勢を正した。


「約束する。俺が全部責任持って教えてやる。だから」


優月は言葉を切って、右手を私の方に伸ばした。
肩に降りた私の髪を、軽く揺らす仕草にドキッとしながら……。


「許嫁から、なんて元に戻さなくていい。ちゃんと最初から……綾乃。俺と恋するところから始めよう」


見上げた優月も照れ臭そうにはにかんでいたから、私は胸をきゅんと疼かせ、一度頷き返すのが精一杯だった。
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