記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
1 悪酔いは後悔の味




「うそっ……」

 一体、何度こんな感じの展開を読んできただろうか。

 自分には起こりっこないと思っていたから、読めていた恋愛小説の一部分。自分も経験すると、読者の何人くらいが想像するだろうか。

 これまで寝たことのないくらい柔らかな感触のベッドに、一糸纏わぬ姿で横たわる朝比奈雪乃(あさひなゆきの)は、ぼんやりと天井の透かし模様の薔薇を眺めた。
 自分は裸で寝るような性格でもなければ、スタイルに自信がある訳でもないから、自分で脱いだ訳ではないのは確かだ。
 という事は、確実に記憶にない誰かがやったという事。

 なのに、何も覚えていない。

 昨夜の最後の記憶といえば、騙されて伯母に見合いをさせられ腹を立てていて、その足で向かった幼馴染みが経営するバー〈バッコス〉で彼ーー鞍山卓馬(くらやまたくま)に愚痴を言っていた気がする。

 そのあとーーからの記憶があやふやだ。
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