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世間一般は、今日からお盆休みに入ったそうだ。
高速道路の長い車列の映像と一緒に、朝のニュースで言っていたのを思い出す。

いわれてみれば、いつもとお客さまの感じが違っていた。

接客が長引き、予定より一時間遅れて入ったお昼休み。
コンビニのアイスコーヒーでサンドイッチを流し込みながら、壁にかかる時計で時間を確認する。

お昼休憩の時間は四十五分。
まだ十分以上残っているけれど、休憩室にいてもわかる店内の喧騒が気になり、そうそうに切り上げることにした。

普段はセレブや著名人の来店も多い桧山家具Tokyoベイサイド店だけど、近くに観光スポットがある立地のせいか、夏休みを利用して上京したらしいお客さまの姿が目立つ。

テレビや雑誌でも度々取りあげられるオシャレな店内を、お土産話の代わりに見学していこうという方たちである。

近代的なビルの一階にある当ショールームだけれど、展示品にも内装にも天然木をふんだんに使っていた。
さらにアロマディフューザーも置いている店内には、仄かに木の香りが漂う。

そのため外から一歩足を踏み入れれば、まるで深い森に迷い込んだような錯覚に陥るのだ。

たいがいのお客さまは、自動ドアをくぐった途端立ち止まり、深呼吸して清々しい空気を肺いっぱいに取り込む。
真夏日が続くこの季節は、余計にリフレッシュ効果があるのだろう。

「見てるだけ〜」オーラを全身から発しつつ、長居するお客さまが続出していた。

うっかり商品の脇にそっと置かれたプライスカードが目に入ってしまったら、「なにかお探しですか?」なんて声をかけられるのは、迷惑に思う人が大半なのだろう。

その気持ちもよくわかる。以前私が勤めていたホームセンターで扱っていた品物たちとは、金額が一桁も二桁も違うのだ。

ただし、品質には絶対の自信がある。しっかりメンテナンスをすれば、生涯どころか子や孫の代まで使っていただけるものも多い。

もちろんそのお手伝いだって、当店が責任をもって請け負っている。

長い目でみれば、決して高い買い物ではないのだけれど……。