そのプロポーズお断りします!
その1。あなたのことは覚えていますが…
「三ツ矢さん、この伝票。発注しといて。」
と営業の田沼さんに肩を叩かれる。

「はい。…ここの営業所、今日で最後なのに、
最後まで忙しいそうですね。」笑いかけると、

「そうだよねえ。俺って働き者。
明日は福岡支社なんだけどねえ。」と苦笑いをしている。

私の隣のデスクの坂井なつき先輩が
「今日は送迎会19時開始ですよ。主役は遅れないで来てくださいね。」と田沼さんに言っている。

「オーケー。19時に『ロマーノ』だったよね。」

「そうでーす。あそこの石窯のピザ最高なんですから。
来ないと先に食べちゃいますよ。」

「あそこに卸してるフレッシュチーズ美味いんだよな。
去年新しいシェフになってから、行列出来てるし…
なるべく早く行くよ。」と笑って事務所を出て言った。


ここ『ジェットフーズ』は食品卸の会社。
全国にある小さな農家さんの自慢の農産物や加工品を扱う代理店だ。
横浜、大阪、福岡、仙台に支社があり、本社は池袋にある。

主に個人経営の飲食店のこだわりと商品を繋いでいる会社だ。


私、三ツ矢 悠里(みつや ゆうり)23歳。

横浜支店営業2課の営業事務をして、1年半経った。

やっと仕事や、周囲の営業さんにも慣れて来たのに、

担当のひとりの田沼さんは(34歳妻子あり。)福岡支社に明日付で転勤だ。

< 1 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop