不埒な専務はおねだーりん
おねだり2:眼鏡をかけてくれないか?

篤典さんへの挨拶を済ませた翌日。

今日から秘書としての勤務が本格的にスタートしたのだが……。

「あの……私は何をすれば?来客対応でしょうか?スケジュール調整でしょうか」

私は朝出社するなりそわそわしながら浜井さんに話しかけた。

面倒くさがり屋の兄は、“行けばわかる”の一点張りでろくに仕事内容を教えてくれなかったのだ。

「そんなに気を張らなくて大丈夫よ。基本的な秘書業務は元々私がやっていたから、遼平先輩がいなくても支障はないし」

浜井さんが優しくそう言うと、お兄ちゃんの穴を埋めるべく息巻いていた私はすっかり拍子抜けしてしまった。

「それじゃあ、私はなんで雇われたんですか?」

不思議に思って尋ねれば、浜井さんは困っているのか悩んでいるのかわからないアルカイックな笑顔を向けてくる。

人手が足りないから雇われたのだと思っていたのに……違うの?

「これは……かずさちゃんにしかできないことなの」

ハイと言われて渡されたのは、ホチキスでまとめられた一組の小冊子。

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