好きの海に溺れそう
脱幼なじみ
~海琉~

二週間ぶりに杏光に会った。



正直、会ったときは、物凄く気まずかった。



それと同時に、こんなに会わなかったのが初めてで寂しさも感じてたから、会えて嬉しいって気持ちもあった。



それに…。



俺が気まずいって顔したの、杏光は絶対にわかってた。



それなのに、そんなこともかまわずに、ただ俺のことだけ気にして…。



そんな杏光が、なんだかすごく、大切に思えた。



そんな俺は今日もバイト。



バイトはすごく楽しい。



最近はキッチンもやらせてもらえていて、簡単な盛り付けとか味付けとかだけど、勉強になる。



杏光に、覚えた料理作ってあげたいなあ…。



って、違う違う…。



もうそういうのはダメなんだって…。



そう思うと苦しい心…。



「…くん」

「え?あっ…ごめんね」



気づけばぼーっとしていて、同じ学校で同じバイト先の松尾さんに呼ばれてた。



「さっき通したオーダー、アボカド抜いてほしいみたいだよ」

「はーい、了解」



松尾さんは、俺と同じ学年の女の子で、俺より数ヶ月早くここのバイト先にいるらしい。



松尾さんのオーダーから、アボカドを黙って抜く俺。



杏光、アボカド好きだったよね。このサラダのアボカド美味しいから、来たときにおすすめしたいな。



って、まただ…。



ぼーっと杏光について考え事。



杏光に二週間ぶりに会ったあのときから。



ふとした瞬間に杏光のことを考えてる。



あのときの杏光の心配した顔が真剣で…。



何度もその顔を思い出してる。



会いたいと、強く思っている自分に気がついてる。



ダメなのに…。



そんな風に杏光について感じたことがなくて、戸惑い。



わけがわからない…。
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