好きの海に溺れそう
「海琉~それ出来たら、4番テーブル持ってって」

「わかりました!」



先輩のバイトさんに言われ、仕事仕事…。



一段落ついて、休憩に入った。



休憩室には先に松尾さんがいた。



「お疲れさま~」



松尾さんが少し横にずれて席を空けてくれる。



その隣に座って、お昼ご飯を食べる。



「バイト、慣れてきたね」

「そうだね、楽しいよ」



松尾さんは、何だか少しそわそわ…?



なんだろう…。



「最近、ぼーっとすること多いけど…大丈夫?」



やっぱりバレてるんだ…。



ダメだなあ…。バイトくらいしっかりやりたいのに。



ちらつく杏光のせいだ…。



「ちょっと色々…疲れてるのかも」

「ちゃんと休まないとダメだよ?海琉くん、頑張ってるから…」

「うん、ありがとう」



しばらくの沈黙。



松尾さんが続けて喋る。



「あ、そういえば海琉くんって、よく一緒に朝学校来てたのって…彼女さん?だよね?」



いや、え?



何でこのタイミングでそれ…?



「彼女じゃないよ…幼なじみで」



声が上ずらないように気をつけて返事をする。



「あ、そうなんだ…仲良さそうだったから、そうかなって」

「…」



夏休みが終わったら、もう杏光とは一緒に学校に行ったりしないだろうな…。



次に会うのは、いつなんだろう…。



松尾さんが休憩を上がって、ぼんやりとまた杏光のことを考えた。



毎日毎日、杏光のことばっかりだ…。



頭の中、杏光でいっぱいで…。



なんとなくそれを、認めたくないような気持ちでいた。



その日のバイトが終わって家に帰っていたら、帰り道で杏光を見かけた。



前の方を歩いてて、買い物帰りなのか、重そうに買い物袋を持ってる。
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