実家での新婚生活にも慣れた頃。

不意に従兄弟の樹彦(タツヒコ)が訪問して来た。

彼は父の弟の誠二叔父様の一人息子。今は無き『花菱金属工業』では営業部に所属していた。
今現在は『花菱メディカル』の営業部部長として開発した医療器具を病院に売り歩く毎日である。


「仕事は?」

「今日はノルマ達成できたから・・・おしまい」

樹彦は私の質問を軽い口調で返してコーヒーを啜った。

「元気そうだね。朱音」

樹彦は長い足を組み換え、切れ長の黒い瞳でジッと見る。

「記憶は戻った?」

「全然」


私もコーヒーを啜る。


「社長との新婚生活は順調?」


「ええ」

「夜も」

樹彦の不躾な問いに眉を顰め、あからさまに嫌な表情で返した。