愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～

「私、頑張る。奏多さんの隣で引け目を感じたくないもの。堂々としていたいの」

私の言葉に、彼は極上の笑顔で応える。

「今のままでも充分だよ。これ以上綺麗だと、俺が瑠衣の横にいられなくなる。君と釣り合わなくなるだろ。だから気合いはほどほどにしてもらわないとね。さあ、行こう。今夜の主役は君だ」

彼が差し出した手をそっと掴み、私は奏多さんのエスコートで、ゆっくりと階段を上った。

海斗が今の私を見たら、なんと言うだろう。
素敵な彼ができたら、土下座して謝ると言った約束を彼は覚えているだろうか。
奏多さん以上の人なんていない。
海斗も認めざるを得ないはずだ。

奏多さんが私を振り返る。

「今日の瑠衣のドレスは俺が選んだんだ。完全に俺の趣味だけど、文句は言わないでよ？君に似合うはずだから」

私は彼を、夢見るように見つめた。

胸の奥から切ないほどに、愛しい気持ちが沸き起こり苦しくなる。

そのまま、ある部屋の前まで来ると、彼はドアを開けた。

「じゃあ待ってるから。変身してきて。楽しみにしてる」

そっと彼の手を離し頷くと、私は覚悟を決めて中に入ってドアを閉めた。

「瑠衣さま。お待ちしておりました」

中に入るとすぐに、待っていたかのように、数名のスタッフが一列に並んで私にお辞儀をする。
「よろしく……お願いします」
躊躇いながら私もお辞儀を返すと、彼女たちはにこやかな表情で私を見た。

「ではこちらへどうぞ」
「はっはい」

案内されて、さらに奥の部屋へと進む。

そこは大きな鏡が壁一面にある部屋だった。中央に、色どり鮮やかなメイクアップの道具が置かれている。

「今夜はどうぞ、私どもにおまかせください。リラックスしてお過ごしくださいませ」

私を椅子に座らせ、そう話す彼女から溢れる自信が、私にも伝わってくる。
私はこれから、奏多さんの婚約者としてふさわしい女性へと生まれ変わる。誰もが驚くほどの美女に。

メイクを施す彼女の指が、優しく私の頬に触れる心地よさに、私はそっと目を閉じた。