たくさんの人が、会場に優しく響き渡る音楽に合わせて、華麗にステップを踏み始める中、私たち四人は互いの顔を見たまま、張りつめた空気をまとい黙りこんでいた。

「月島社長」

私と奏多さんの隣で、龍さんを呼ぶ男性の声がした。

「接待のお時間が迫っております。そろそろ退出いたしませんと」

秘書だろうか。
申しわけなさそうに告げている。

「ええ?今からが面白いのに」

「ですが……」

「わかってるよ。仕事だから仕方ないね」

ふたりの会話を聞きながらも、そちらを見ることはできない。
私は海斗から、目を逸らせないでいた。

「じゃあ、瑠衣さん。またね。今日のことは後日まとめて聞くよ」

私の肩に手を置いて、龍さんが言う。
私は海斗を見たままの状態で頷いた。失礼だとは思うが、それが精一杯だった。

「龍。アクティブトラベルの商談なら、決裁は下りてるから」

「ああ、任せて。その代わり、この状況がこれからどうなるのか、ちゃんとあとで教えろよ」

「ああ。商談のほう、期待してるよ」

奏多さんと龍さんは、今起きていることに動じてはいないかのように、軽く会話をする。そのあと龍さんは去っていった。