気高き国王の過保護な愛執
「ルビオ、ここはもういいぜ。あちこち歩いてこいよ」

「そうすらあ、じゃあな!」


陽気にリノに手を振るルビオに、フレデリカは目を剥いた。唖然としているところに、ルビオが心持ち得意げに肩をそびやかす。


「ジェルバを勉強してるんだ。どう?」


ジェルバというのはこの土地の言葉だ。まんざらでもなさそうなルビオには悪いが、フレデリカは冷静に、正直な感想を述べた。


「残念ながら、まったく似合ってないわ」

「そう? でも着てて楽しいよ」

「服の話じゃないわよ」

「リッカはなんで、こういうのを着てないんだ」


歩きながら、配られている酒の杯をふたつ取り、ひとつをフレデリカに渡す。チンとぶつけ合ってから飲み干すと、火の玉のような熱が喉を下りていき、身体を温めた。


「ちょっと見に来ただけだから」

「オットーは着てたよ。挨拶も見事で、みんな大喜びだった」

「フレデリカ様、いい宵を」


広場の周辺は灌木が並び、間に張られた綱にランタンが吊るされている。その綱が迷路のような道を作り、人々は意味もなくそこを歩いては、祭の夜を楽しむのだ。

フレデリカは軽く膝を折って挨拶をくれた女性にうなずき返した。ルビオが感心したように言う。


「リッカたちは慕われてるな」

「爵位を返上したとはいえ、父は今でもフォン・ウーラントだもの」

「気を使われるのが嫌?」

「嫌ではないけど。こんな日は、誰だってのんびりしたいでしょ。だから必要以上には、顔を出さないようにしているの」


実際のところ、フレデリカたちよりよっぽど裕福な暮らしをしている村人もいる。それでもなお、貴族であるというだけで敬われるのは耐えられない。

今ではもう、彼女らは村人の多くと同じ、清貧な持たざる者であり、国に税を納める立場であるのに。
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