可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
会いたい
祥ちゃんの出産前には、ご飯食べに行こうと約束して家に帰った
22時になろうとしていたところで、相川くんに電話をかけた


「もしもし、奈南美さん?帰ったんですか?」
「うん、今帰ってきたところ」


たったこれだけの会話で、ほっとした


「今日は大変でしたね」
「うん、大変だった。本当に疲れちゃった。でも、祥ちゃんに会って癒されたけどね」
「祥子さん、癒し系ですもんね」


お互いに軽く笑った


「相川くん、今日仕事にならなかったって?」
「うちの藤川さんが事細かに教えてくれるもんだから、気が気じゃありませんでしたよ」
「そんな。心配することないのに」
「奈南美さん、もし今、俺と付き合ってなかったら……」
「それはない、絶対に」



相川くんの言葉を遮った
それには、相川くんもびっくりしているようだ


「奈南美さん?」
「だって、木崎課長とは今日初めて会話をしたようなものよ?ありえないわ」
「でも、俺とだってあんまり会話したことなかったでしょう?」
「そう言えばそうだったわね」


思わず笑ってしまった


「笑い事じゃないですよ。本当に」
「ごめんなさい」


笑いながら言うと、奈南美さんと真面目に呼ばれた


「何で俺と付き合おうと思ったんですか?」
「教えたくないなぁ」
「ひどっ……こっちは真面目に聞いてるのに」
「私が素直に教えると思う?」
「それもそうですね」
「でしょ?」


お互い笑いあった


「相川くんが心配することないわ。木崎課長は、私の事を好きな訳じゃないと思う。部長から聞いてない?」
「一応聞いてはいますけどね」
「だから、何か理由があって私に声を掛けたんだよきっと。でも、用心するから」
「はい。気を付けて下さいね」
「うん。とりあえず、明日から社食には行かない。て言うか、行きたくもない」


相川くんが吹き出した
つられて私も笑う


「奈南美さん、今週末は家に来れますか?」
「うん、行けるよ。金曜日はちょっと残業になるかもしれないけど、そんなに遅くならないから」
「じゃ、あの居酒屋で待ってますね」
「うん」


週末はお互いの予定がない限り、相川くんの家で過ごすようになっていた
金曜日から行ける時は、初デートで行った居酒屋で待ち合わせるのが定番だ


「奈南美さんを思い切り抱きしめたいです」
「あ、相川くん?」
「奈南美さんは?そう思ってくれないんですか?」
「もうっ、何言ってるの!もう切るわよ。明日も仕事なんだから」
「ははっ、すいません。じゃ、もう寝ます。奈南美さん、明日も仕事頑張ってください」
「うん。相川くんも頑張って。おやすみ」
「おやすみなさい」


電話を切ると、大きく息をはいた
時計を見るともう23時前


「早くお風呂入らなきゃ。明日も仕事。会社行きたくないなぁ……」


でも、週末は相川くんと一緒に過ごせる
さっきは照れて素直になれなかったけど、私も相川くんに思い切り抱きしめられたい
よしっと声を出して、お風呂に入って眠った
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