これは私、赤鈴が実際に体験した出来事です。
あれは今から1年前。11月初旬頃の話。



その日、仕事は休みで昼まで寝ていた私はふと思い立ち、"あるところ"に行きました。
私が向かったのはW県では心霊スポットとして名高い"A神社"。そこは人形供養で有名な神社でした。
今考えると、なぜあの時急に行きたくなったのか分かりません。

 自宅を出たのが夕方頃だったでしょうか。そこから数時間かけ、現地についたのが19時半頃だったと思います。
駐車場に車を停め、外に出ると近くから祭囃子が聞こえてきました。

――近くでお祭りでもやってるのかな

と思ったくらいで特に気にしませんでした。
その足で境内に入って、その異様な空気にすぐ気づきました。
境内だけ明らかに空気が違うのです。
上手くいえないのですが、季節的な肌寒さとは違った冷気のようなものを感じました。
境内には灯り1つなく、真っ暗でした。私はその中を1人歩いていきました。



本堂らしき場所の周囲には噂通り、無数の人形が置いてありました。市松人形や日本人形など様々でした。
特に異様に感じたのが市松人形でした。夜の暗闇がその不気味さをより一層際立たせていました。

本堂でお参りを済ませた後、軽く境内を回り、閉門時間が迫っていたこともあって早々に帰りました。写真と動画も撮りました。
帰る途中で夕飯を済ませ、その日は何事もなく無事に帰宅できました。



 それから5日ほど経ったある日の深夜。私は某動画サイトで毎週放送しているラジオ収録のため、風呂から上がった後、パソコンのツールを使って相方であるSさんと話していました。

無事にラジオ収録も終わった後のことです。
「お疲れ様でした~」
「お疲れッス~」
「赤鈴さん、ちょっと変なこと訊いていい?」
「はい。なんですか?」
「今近くに彼女さんとかおる?」
「いや、いませんけど。ていうか、俺に彼女がおらんのSさんも知ってるでしょ」
私は笑いながら答えました。

「じゃあさ、さっきから聞こえてるこの女の人の笑い声はなに?」

初めは私も

――またSさんが私を怖がらそうとしてそんなこと言ってるんだな

ぐらいにしか思っていませんでした。
「もうやめてくださいよ~」
そう言って、私は笑っていました。

しかし、それにしてはしつこく訊いてくるし、トーンも冗談を言っているような感じには聞こえませんでした。
「……マジっすか?」
「うん。収録中もずっと聞こえてた。"フフフ……"っていう女の人の笑い声。さっきも聞こえたし。俺はてっきり近くに彼女さんでもおるんかなって思ってたけど」
その時、私は初めてSさんに5日前にW県にあるA神社に行ったことを告げました。
「連れてきたんじゃない?」
「ですかね?」
「いいじゃん。もうその幽霊が彼女で」
「嫌ですよ。生きた人間がいいです」
その場は笑い話になりましたが、内心少し気になっていました。しかし、霊感なんて微塵もなく、そういった体験もしたことのなかった私は特に怖いという感情はありませんでした。元々その手の話は好きでしたし、平気でした。



 次の日の深夜。私は変な夢を見ました。
私の部屋に髪の長い、細身の知らない女性が入ってきて、笑いながら私の首を絞めてくるのです。
動こうにも金縛りで身体を動かすことができず、されるがままでした。
飛び起きると、そこにはもう女性の姿はなく、時計の針は深夜3時を指していました。偶然にもそれは女の人の笑い声が聞こえた、という前日の時間と同時刻だったのです。
しかし、鈍感な私は

――悪い夢でも見たんだろう

ぐらいにしか思っておらず、そのまま気にせずぐっすり眠りました。



 次の日、そのことを妹に話しました。
「それなら私も聞いたよ」
妹は顔色1つ変えず答えました。

妹の話によると、妹が夜中寝ていると突然金縛りに遭い、近くから女の人の笑い声が聞こえてきたそうです。
私とは違い、気の強かった妹は怖いというよりも次の日も朝早いのに寝れない、ということに対して苛立ちを感じ、力づくで金縛りを解き、何も気にすることなくそのまま眠ったそうです。

それ以外にも、妹がリビングで夕飯の支度をしていると、リビングに誰かが入ってきたそうです。最初は

――誰かが帰ってきたのかな

と思ったらしいのですが、どうやらそうじゃない。
それは黒い影のようなもので、少しずつ妹に近づいてきたらしいです。
そして、妹の隣まで来ると顔を覗き込み、"ニヤッ"と笑ったそうです。そこは人が立てるようなスペースはありませんでした。それを見た妹は

――気色悪っ!

と思っただけで無視したそうです。
我が妹ながら恐ろしいものです。ある意味、幽霊より怖い。



 それからは特に変わったことはありません。あのような夢を見ることもないですし、妹が何か見たという話も、笑い声が聞こえた、という話もありません。
そもそもあれは本当に夢だったのか、今でも判断がつかないでいます。

ちなみに、お祓いはしていません。

――別にしなくても大丈夫じゃね?

と思ってます。実際何もありませんし。
まぁ気づいていないだけかもしれませんが。

あの時収録したラジオは今でも動画サイトにアップされています。写真と動画も残ってます。
何度も聞き直しましたが、笑い声は確認できませんでした。写真と動画も確認しましたが、特に変わったところは見られませんでした。



これが私が体験した最初で最後の心霊体験です。

この作品のキーワード
ホラー  オカルト  実話  怖い話  怪談  ほん怖  心霊  幽霊  実体験  体験談