君を愛していいのは俺だけ

 自宅に入っても、足取りは覚束ない。
 なんとか手洗いとうがいを済ませ、着ていた服を脱ぎ、ゆったりとした部屋着に着替えた。
 膝上まであるロングTシャツは、ゆったりしていてとても楽だ。

 冷蔵庫からスポーツドリンクを出して、グラスに注ぎ、日本酒で焼けてしまった喉を潤した。


「陽太くんじゃないのかな……」

 隣に座った周防社長に、たびたび見つめられてドキドキした。
 思い出すだけで、容易に鼓動が急く。

 あんなに近くで過ごしたのに無反応なのだから、きっと違うのかもしれないと思えてきた。


 だけど、笑った表情も耳元で囁かれた声色も、すべてが覚えている彼の姿と酷似していて……。

 想いを伝える勇気はないけれど、彼が陽太くんかどうか確かめようと決意した。



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