過保護なドクターととろ甘同居
「あ、ねえ三枝さん、院長のご飯とか、作ってあげてよ! 一緒の住まいみたいなもんだし、ね!」
「えっ、私がですか?」
宮城さんに突然話を振られて、箸でつまんだミニトマトがつるりとお弁当箱の中に落下する。
「私は全然構わないですけど……先生にご迷惑なんでは……」
散々二人の話を耳にしていて、先生は女性を寄り付けないとか、一人の時間が好きそうだとか、私の中でそんな結論に至っていたところ。
だから、私が先生のプライベートな時間に関わってきたら、きっと煩わしいと思う。
「院長、そういうことやってくれそうな女性もいないみたいだし、私たちとしては食生活とか心配なのよ。先生に何かあったら、職場失うことになるわけだし」
先生の心配をしているのか、はたまた自分たちの心配をしているのか、最終的にはよくわからなくなっているけど、どっちにしろ先生には健康ではいてほしいということらしい。
そう言った宮城さんは「ね、お願いよ!」と、箸に載せたご飯を口に運ぶ。
「そうね、三枝さんが院長のこと気に掛けてくれたら、私たちも少しは安心できるわ」
木之本さんにまでにこりと微笑まれてしまって、その場は「わかりました」と無難な返事をするしかなかった。