過保護なドクターととろ甘同居
「しっかし、院長もやるわね。断ったって、どんな風に言ったの?」
あの時、現場にいなかった宮城さんは、先生がどんな風に断りを入れたのが気になったようだ。
「丁重にお断りしてたわよ。こちらの事情で受け入れられないって。出産する患者さんが多くて、満床だからって」
「へ〜、機転効かせて嘘ついたってわけね。さすがだわ」
ここ最近は出産する患者さんはまばらで、入院している人は多くはない。
ベッドも空いているけれど、先生はそんな嘘を理由にうちでの受け入れを断ってくれた。
木之本さんは「淡々と、怖かったわよー」と、あの時の先生の様子を振り返る。
それを聞いた宮城さんは「言ってやればよかったのよ、その男に」なんてまた声を荒げた。
「院長も、三枝さんを気遣ってああ言ってくれたわけだし、あまり気に病まないで、ね?」
「そうよ! そんな男、別れて正解。三枝さん可愛いし、いい男なんかたくさんいるんだから」
「はい、ありがとうございます」
こうして優しい言葉をかけもらえることが、今は何より有り難かった。
そして、あの時の先生の気遣いも。
話せる時間ができたら、改めてお礼を言おう。
そう思いながら、お弁当に箸をつけた。