第一王子に、転生令嬢のハーブティーを

1.伯爵令嬢、アリシア・リアンノーズ




「アリシア!大変だ!」



 父であるオリヴィオ・リアンノーズ伯爵の焦ったような声に、庭で水やりをしていたアリシアは、思わずその手を止めて振り返った。
 
 水を浴びていた植物の葉に付いた雫が、太陽の光を反射してキラキラと光っている。濃い紫色の花を咲かせたラベンダー。アリシアのお気に入りの花の一つだ。



「そんなに慌ててどうしたのです、お父様?」



 普段の落ち着き払った父とは異なる興奮した様子に、アリシアは少し眉をひそめる。

 アリシアのそばに控えていたメイドのノアも、心配そうな面持ちでオリヴィオにコップ一杯の水を差し出した。



「ア、アリシア。落ち着いて聞いてくれ」


「わたしは落ち着いていますよ。落ち着いていないのはお父様の方です」


「つい先ほど、知らせが来たのだ」



 オリヴィオは差し出された水を一口含んでから言う。手には便箋のようなものが数枚。かなり上等な紙に見える。



「王室からの手紙だ」


「ああ……」



 なるほど、どうりで立派な紙であるはずだ。そうなると気になるのは内容なのだが。

 オリヴィオは再度確認のためというように、一度その手紙に目を通してから、まっすぐアリシアの目を見た。


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