冷徹社長の容赦ないご愛執
『で、何人来るんだ?』

「え、あ……」


 耳元に叔父の声を聴きながら横目で見た先では、橘社長が長い指でピースサインをしている。

 なにもこの場で写真を撮ってほしいわけではないことくらいわかり、慌てて耳元に意識を移した。


「ふ、ふたり、で……」

『おう、わかった』


 時間はどうするかと聞かれ、受話器を押さえて橘社長に尋ねると「Half past 19」〈十九時半〉と馴染みのある英語で返事が返ってきた。


 通話を終え、恐縮しながら受話器を返すと、長い指が満足げに、静かに元の場所へと置いてくれた。


「I got a reservation at 19:30.」
<十九時半で、予約お取りしました>

「I see. Thank you.」
<そうか、ありがとう> 

 
 任務完了の確認をする私に返されるのは、滑らかな異国語。

 さっき過った違和感は、久しぶりの英語三昧で、私の脳を混乱させたに違いない。

 まさか、社長が日本語を発した、だなんてただの勘違いだったのだと思い直した。
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